5月末に発行された『2022年版ものづくり白書』概要版にて、大きな事業環境変化と記されたカーボンニュートラル、人権尊重、DX(デジタルトランスフォーメーション)について、所感をまとめました。
カーボンニュートラル
カーボンニュートラルとは、CO2やメタン、N2Oやフロンガスといった温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするため、排出せざるを得ない温室効果ガスの除去や吸収により差し引きゼロにする活動です。
欧米諸国や日本は2050年までにカーボンニュートラルを表明していますが、ロシアや中国は2060年まで、インドは2070年まで、北アフリカ諸国などは表明しておらず、足並みがそろっていないのが現状です。
ものづくり白書では、国内の取り組み事例として、セイコーエプソンや三菱UFJ銀行・ゼロボードによるサプライチェーン全体のCO2削減活動を紹介しています。また、素材メーカーの製造プロセスにおける化石燃料から水素・アンモニア等への転換の促進や顧客企業を含む業界全体でのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを示唆しています。
目先ではなく将来にわたって地球環境を守るために、国内のサプライチェーン・業界に限定せず、グローバルサプライチェーンにおける取り組みが必要です。将来ありたい地球像から業界が目指す姿、自社を関連付け、取り組むべき事業活動を決定しましょう。
人権尊重
欧米諸国を中心に企業活動における人権への負の影響を特定し、それを予防、軽減させ、情報発信をする人権デュー・ディリジェンス(DD)に関する動きが進展しています。
日本においても経済産業省に「ビジネス・人権政策調整室」が設置され、対応が始まりました。
負の影響とは具体的にどんなものが該当するのかですが、中国の新疆ウイグル自治区でも問題となった強制労働やハラスメント、安全衛生、プライバシー漏洩などがあたります。
事業活動において人権尊重を適正にするために、自社内のみならず、今まで取り残されがちであった原料産地の従業者や調達先、取引先や輸送業者、リサイクル業者といった、サプライチェーン全体への配慮が必要となります。
デジタルトランスフォーメーション
新型コロナウィルスの流行や東京オリンピックに伴い、飛躍的にテレワークが進みました。従来より製造業はデジタル化が早いと言われてきましたが、AI・データサイエンスといった技術革新によりオフィスワークのみならず、製造の全体や一部の自動化進んでいます。
デジタル化が進む中、ここ数年はサイバー攻撃によるセキュリティ対策の必要性が高まっています。一昔前までは大企業への攻撃が主流でしたが、地域の医療施設といった中小企業への攻撃例も増えつつあります。
このような中、自社内のセキュリティ対策に限らず、事業パートナーなどサプライチェーン全体を含めたサイバーセキュリティ対策が求められるようになりました。
いきなりサプライチェーン全体は難しいかもしれませんが、少なくとも主要取引先とは、セキュリティ対策の指針や具体的なルール・運用方法、BCP(事業継続計画)について、互いに理解する活動を推奨します。
今回は『2022年版ものづくり白書』概要版を基に所感をまとめました。
カーボンニュートラル、人権尊重、DX(デジタルトランスフォーメーション)ぞれぞれの施策は違えど、サプライチェーン全体(国内 → グローバル)が共通のキーワードと言えます。
今後の事業活動の参考にしてください。