開発リーダーは、日々、悩みがつきません。新規事業や従来のラインナップにない新製品の開発を担うリーダーであればなおのこと、組織マネジメントに苦労するケースが多いようです。
話を聞いてみると、「メンバーのモチベーションが維持しにくい」、「そもそもプロジェクトに関心がないように感じられる」、「担当業務は一生懸命で質も高いけれど、協力する姿勢が見られない」等々。どれも業務の質やスピードに直接的な影響があるとは言い切れず、指導がしにくいものです。
私自身、このような問題は既存事業の開発よりも、新規事業の開発で発生しやすいと感じています。
新規事業の特徴として
①開発時に必ず成功が約束されているわけではなく、事業化する意義を感じにくい
②内部・外部環境の変化により、当初のプロジェクト目標が変わることが多い
③大人数での開発になるほど、事業やプロジェクト目標が個々のメンバーに浸透しにくい
があります。
この問題を打破するために私がお願いしているのは、自身の管理組織(チーム)にとっての目標を立てることです。
つまり、担当する新規事業開発プロジェクトの上位方針や目標をもとに、リーダー自身が管理する組織の目標に落とし込むのです。すでに目標を設定しているリーダーも、この機会に振り返っていただきたいのが、個々のメンバーが自分ごととして、とらえられる目標となっているか確認してください。
たとえば、上位目標が「食品業界向けに異物混入防止機能付き生産機械を●●年●月に発売開始する」であれば、部・課レベル目標は「●●μ以下の異物混入を検知可能な異物混入機能を原価¥●●以下、大きさ●●●mm*●●●mm*●●●mm以下で開発する」のようになりますが、部・課目標より下位が存在せず、個人目標を立てている場合は、最小チーム単位まで落とし込みます。
1人仕事ではなく2名以上であればチームとしてみなします。
最小チーム単位で目標を設定することで、メンバー自身が、自らの業務が新規事業プロジェクトの何に貢献するか(価値を提供するか)を上位から下位まで体系立てて理解し、モチベーション維持やプロジェクト全体への関心を促すことができ、徐々にプロジェクトへ積極的に協力する行動へとつながりやすくなります。
特に大規模開発の場合では、上位目標と個人目標に距離があるため、メンバーは自分の業務がプロジェクトの何に寄与するのか意義を見失いがちです。
悪い事例では、外部環境の変化や開発の困難さを背景に、いつの間にか個々のメンバーが、自身にとって都合のよい目標に修正してしまい、当初の目標には遠くおよばない失敗プロジェクトもありました。
このような大きな失敗にはならずとも、環境変化により揺らぎやすい新規事業プロジェクトは、メンバー全員が目標とその目的を理解し、日常起こりうる困難や逆境に倒れないマネジメントが求められます。