さて「科学技術白書を考える(第二回)」では、第1章 科学技術による未来予測の取組を取り上げようと思います。
引用元:第1章 科学技術による未来予測の取組
この章では、科学技術に関する未来予測の歴史的な変遷や手法の紹介、また取り組み事例が取り扱われています。
この中から今回は、未来予測の手法について掘り下げていこうと思います。
早速ですが、「あなたの会社、組織では、どのような方法で未来予測をしていますか?」
未来予測と一言で表しても、個々人が抱くイメージは実に様々です。
例えば、「技術の進化の過程を表すものだ」「今後、起こり得る社会や環境に関わる問題を予測したものだ」「こうなって欲しいというありたい将来を描くものだ」などなど。
実はこれら全てが正解です。そして、答えは1つではありません。
強いて言うならば、これら全てが複合的に合わさったものと言えるでしょう。
第1章では、未来予測の手法を定量的・定性的カテゴリーに分類して5つ紹介しています。定量的手法として、シミュレーション法とデルファイ法、定性的手法として、シナリオ法、スキャニング法とビジョニング法です。
定量的手法はどちらかと言うと政府など公共機関、民間の経済研究所などが行っていることが多く、馴染みがないかもしれません。
それぞれの手法については引用元を参照していただくとして、この中で研究開発部門が日常的に行っているであろう定性的手法を2つピックアップします。
1つ目はシナリオ法です。
これは、将来起こるであろう自然環境の変化(地球温暖化や災害など)や社会変化(世界人口増加など)、政治や経済変化(国ごとの勢力など)の可能性を起点として複数の可能性を描く方法です。
今回のパンデミックについても、不確実ではあるものの発生の可能性を起点に未来を描くと言う意味では、今後取り組んでおきたいテーマでしょう。
2つ目はビジョニング法です。
これは現在や近しい将来をベースに将来ありたい姿を描くものです。
昨今の主流であるバックキャストで未来予測し、研究開発テーマへと導くために取り掛かる最初のステップです。
SDGSに対する施策をはじめ、ここ数年はこのビジョニング手法が多くの企業で採用されています。この手法の良いところは、ありたい姿・目指したい姿を設定することでワクワク感をもたらし、動機付けとしてひと役買うことがあります。
今回紹介したこの2つの手法は一見、相反するように感じるかもしれません。
しかし、どちらが優れていると言うことなく、実は2つの手法を両立させながら未来予測を行い、研究開発テーマを決定している現実に気づくのではないでしょうか。
もちろん、それぞれの重み付けや取り掛かる上で必要なステップ、進め方はしっかりと計画を立てなくてはいけません。
未来予測の方法や研究開発テーマの質を高めることに苦労しているのであれば、お気軽にご相談ください。