はじめに
研究開発の現場では、用途が広い技術に対して次のような悩みがよく見られます。
・用途が広く、どこに絞るべきか分からない
・具体的な引き合いがないと開発に踏み出せない
・どの用途が自社に適しているのか説明できない
技術としての可能性は高いにもかかわらず、事業化の方向性が定まらない状態です。
「いろいろな用途が考えられるが、まじめに検討するには負荷が高い」
という声もよく聞きます。
現場だけでなく、経営側も「どの用途が本当に売れるのか」に確信が持てず、意思決定が難しくなります。
なぜ用途を広げてしまうのか
技術者の立場では、用途が広いことは魅力的に映ります。
・多くの用途に展開できる
・売上拡大の可能性がある
・価値の高い技術であると説明しやすい
また、技術評価の観点でも、応用範囲が広いことは重要な指標です。
複数の用途に展開できる技術は、汎用性が高く技術資産としての価値も高いと評価されます。
そのため「用途が多い=良い」という認識は、技術的には自然なものです。
事業の視点で何が起きているか
一方で、事業の視点では状況が変わります。
用途が多い状態では、
・どの市場を狙うのか
・どの顧客の課題を解決するのか
・どの程度の売上・利益が見込めるのか
が定まりません。
経営側から見ると、複数の用途が並んでいる状態では投資判断に必要な材料が不足しています。
結果として「判断できない」という状況になります。
未来は不確実であるため、確信が持てないテーマに対しては、投資を見送る判断がされやすくなります。
具体例:柔軟センサー技術
例えば柔軟センサー技術の場合、
・産業ロボット
・介護時の見守り
・ヘルスケアにおける動作センシング
など、複数の用途が考えられます。
いずれも魅力的な市場であり、技術的にも適用可能です。
しかし、どの用途を優先するべきかは簡単には決まりません。
その結果、
用途を多数検討する
↓
実現できそうな用途を選ぶ
↓
開発テーマとして提案する
↓
売上見込みに確信が持てず承認されない
↓
再び用途検討に戻る
というループが発生します。
このプロセスでは、技術は前進しているように見えますが、事業としては前に進んでいません。
まとめ
用途が広いことは、技術としては価値の高さを示す重要な要素です。
しかし事業化の観点では、それだけでは意思決定ができません。
重要なのは、用途を広げることではなく、どこに絞るかです。
用途は広げるものではなく、顧客が抱える重要課題から絞り込むものです。
「誰のどの課題を解決するのか」を起点に考えることで、はじめて事業としての判断が可能になります。
