今回は「5フォース分析とは」について、解説します。
5フォース(ファイブフォース)分析とは、アメリカの経営学者として著名なマイケル・ポーターの著書『競争の戦略』により広く世に知られたマーケティング分析ツールです。
具体的には、「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因、計5つの要因から業界の構造を分析するツールを示します。
企業内において、事業戦略を決定する際の根拠となるデータとして使われることが一般的です。
ではこれら5つの要因をもう少し詳しく解説します。
まず内的要因の1つ目である、「売り手の交渉力」です。
自社の商品・サービスを作るために必要な原材料を供給する国や企業の力です。
例えば、金・銀、銅やアルミニウムといったレアメタルが必要な事業でしたら、供給側の交渉力が発揮されるため、高価であっても購入するでしょう。
またグローバル展開しているハンバーガーチェーンの場合、小麦粉など原料の購入規模が莫大となり、供給側は単価を安くせざるを得なくなります。
内的要因2つ目は「買い手交渉力」です。
自社の商品・サービスを購入する消費者や企業の力です。
例えば、家電業界のように、家電量販店のライバル同士が熾烈な安値競争をしています。
これは、消費者がインターネットで安値情報をリアルタイムに入手できるようになり、買い手の交渉力が強くなっているとを示しています。
また生産工場における自動化システムの置き換えでは、生産効率が高まるという効果は期待できたとしても、切り替え時の生産テスト費用と生産性能への影響を鑑みて移行しない判断をすることがあります。
これは買い手側が切り替えコストを相対的に判断した結果であり、買い手の交渉力が高い事例です。
内的要因3つ目は「競争企業間の敵対関係」です。
いわゆる競合他社との関係ですが、すでに参入している競争企業の数や将来にわたる業界の成長力を分析します。
研究開発組織においては、商品・サービスの機能や仕様を競合他社と比較し、将来にわたり勝てる技術を獲得することを示します。
事業戦略として、競合分析の上で事業撤退を判断する際の情報源ともなります。
次に外的要因の1つ目である「新規参入の脅威」です。
かつての半導体産業は、日本企業が世界のトップとして君臨していました。
日本企業の多くは研究開発から設計、生産を一貫して事業としていましたが、ARMに代表されるファブレス企業やTSMCに代表される製造メーカーの台頭で新規参入組が勝利しました。
私自身、とある韓国企業のベンチマーキングをしていたところ、数年でトップの座を明け渡した現場を目の当たりにしました。新規参入の脅威は、冗談や脅しではなく、現場が気づいた時には追い越されかねないもの肌で感じたことをよく覚えています。
最後にに外的要因の2つ目「代替品の脅威」です。
既存品に対して相対的なプライス・パフォーマンスがある、買い手の切り替えコストが安価・ないような代替商品・サービスです。
これは、タクシー業界におけるウーバーが分かりやすい事例です。
タクシーを利用するには、料金を支払ったうえで送迎してもらう、もしくはタクシー乗り場まで利用者が動くものでしたが、ウーバーはスマホでタップするだけで気に入った車や近くにいる車を利用できる、支払いもトラブルなく安全に行うことができます。
買い手はアプリダウンロードとクレジットカード登録のみで、海外など知らない土地で安全に移動することができるというメリットがあります。
これら5つの力を統合的に分析するツールが5フォースとなります。
イノベーティブ商品を目指すのであれば、5フォースすべての視点を取り入れ、アイディアの源泉としましょう。
もし、既存事業の事業戦略をこれから立てるのであれば、「新規参入の脅威」と「代替品の脅威」の分析にも注力してください。
新規参入や代替品は、いずれ顕在化する競合として、既存業界を刷新する可能性を秘めています。
一見、自社の既存事業とは関係しないかもしれない技術や商品のトレンド情報を収集し、「もし自社の業界に参入してきたら」を仮説するクセをつけましょう。
当社では、既存事業の成長戦略、新規事業開発戦略の策定支援を承っています。
詳細は、お問合せよりご相談ください。