今回は「共創におけるリスクマネジメント」というタイトルで解説します。
昨今、オープンイノベーションによる高度、複雑な商品・サービスを開発することは、当たり前になってきました。
しかしながらオープンイノベーションに取り組んだものの、思ったような開発成果が得られないという企業の声も耳にします。
これは、どちらの企業が技術を獲得するかといったパワーゲームによる理由ももちろんありますが、開発そのものが目標に達しない、連携がうまくできないといった開発現場における要因も少なくありません。
開発現場による失敗を極力少なくするために、全体を統括するリーダーには、徹底したリスクマネジメントスキルが求められます。
大学や研究機関といった社外組織との技術開発だけではなく、研究開発組織と社内事業部との協業においても、開発リーダーが押さえておくべきリスクマネジメントのポイントを3つ紹介します。
1つ目は、自部門=内部よりも他部門=外部の進捗、課題、リスクに注意することです。
オープンイノベーションの現場で目にするケースとして、全体マネジメントを行うリーダーが自社の開発に注力しすぎ、共創先の開発にあまり注目しないことで、開発成果が得られないことがあります。
これは共創先の開発に口出ししてはいけないという意識なのかもしれません、もしくは責任範囲を明確に分けているという意識の表れかもしれません。
さらに言えば、どうしても自社・自部門の開発に対する思い入れが強くなり、他社・他部門への関心が低くなるということでもあります。
全体マネジメントを行うリーダーは、全体を俯瞰し、内部よりも意識的に外部の進捗、課題、リスクに向き合うことで、バランスよくリスクマネジメントを行うことができるでしょう。
2つ目は、自部門の常識で都合よく解釈しないことです。
社内の研究開発と事業部、大企業とベンチャーの共創では、開発完了レベルが異なることがあります。
例えば、商品設計側が期待する実用化開発レベルと研究開発部門が成果とする実用化開発レベルが違うことで、機能仕様、公差や動作温度範囲など異なるといった問題が該当します。
このように自部門の常識をもとに、意図しないものの他部門の開発結果を都合よく解釈してしまうことで、商品リリースが間に合わないということもありました。
協業開発では、実用化開発完了とは具体的にどのような状態を示すのか、目標値とともに共通認識することで、正確なリスクマネジメントへとつながります。
3つ目は、正確かつリアルタイムで情報を入手することです。
協業開発でも、あるステップでは開発項目の責務を決め、各部門が独立して開発を行うことがあります。
また物理的に遠隔地で共同開発を行うこともあるでしょう。
このように物理的、もしくは開発活動ごとに距離が発生する場合では、担当者にリアルタイムで確認を行い、正確に状況を理解することが重要です。
みなさんも経験されているように、特に初動は状況が逐一変化し、朝一番の開発結果が180°変わることなど当たり前に発生します。
全体を統括するリーダーは、開発現場を回り、担当リーダーと積極的にコミュニケーションをとることで、リスクを抑える行動をとっていきましょう。
今回は「社内外との共創による開発では、3つのポイントでリスクマネジメントを徹底する」について紹介しました。